建築 と 茶の湯 の間

桐浴邦夫(KIRISAKO Kunio)の備忘録 茶室・数寄屋・茶の湯・ヘリテージマネージャーのことなど

岡田孝男の記録した大阪の幻の茶室

日本建築協会の『建築と社会』2018.11号、「再読 関西の建築」で、拙稿「岡田孝男の記録した大阪の幻の茶室」が掲載されました。
1941年の同誌の記事の再読です。この岡田孝男の記録した茶室のうち、大阪市内のものがすべてその後戦禍で焼失します。今となってはこれらの記事は、当時の大阪を知る上で、あるいは茶室の歴史を知る上で、大変貴重な資料となっています。ここでは1月号「願泉寺の茶室」、2月号「豊公の席と淀屋の席」、3月号「今宮の十萬堂」、4月号「一心寺の八窓の席」、5月号「義心亭」を紹介しています。岡田孝男のご子息である岡田聿之氏には大変お世話になりました。そして日本建築協会の編集の方にも校正の際さまざまにご指摘いただき感謝申し上げます。
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この度の記事は岡田孝男のことでありますが、私のような者が、このような茶室のことについて語ることができるのは、中村先生のご指導のおかげです。深く御礼申し上げます。

訃報 中村昌生先生

恩師、中村昌生先生が亡くなった。平成30年11月5日のことだ。
その業績は今さら言うまでもないが、茶室・数寄屋建築の研究者そして建築家としての泰斗であり、日本の伝統建築技術の顕彰に努められ、間近に迫った「伝統建築 工匠の技」のユネスコ文化遺産登録への道筋をつけたことでも知られている。
私は京都工芸繊維大学の学部学生の時からご指導いただいた。もちろん大学院は先生の研究室。と書けば、たいそう優秀だったように聞こえるが、全くそんなことはない。大学卒業までに5年かかっているし。修士そして研究生の時には何度か厳しく叱られ、しまいには破門のような状況にもなった。「君はもう来んでもいい」恒例の新年会に呼ばれなかったこともあった。
しかし、その後お許しをいただき、何とか関わりをもつことが許された。
就職も先生のお世話で決まった。静岡県の小さな専門学校に勤めた。そのとき中村昌生先生の弟子だから茶室のことは何でも分かるだろう、と思われていたようだが、じつは全く何も知らなかった。修士論文は近代建築、武田五一であったのだ。しかしその時、必死になって茶室の勉強をした。特に研究者になるつもりもなく田舎の学校の教員でいいと思って働いていたのだが、このときに意識が変わった。
それから少しずつ研究を始め、先生にも見ていただくようになった。そのかいあってか、すでに京工繊大を退官されていた中村先生より、東京大学鈴木博之先生をご紹介いただき、博士論文を書くことができた。
その後、先生とは時々連絡を取り合いながら研究を進めてきた。近代の茶室のことが大きなテーマであったが、それ以前、つまり桃山や江戸期のことも研究しなければならないとご指導を受けた。「近代のことなど、その前のことが分からずに理解できるものか」と。私の山上宗二の研究は、それがひとつのきっかけであった。
あるとき、先生の事務所をうかがったとき、先生はおもむろに棚から堀口捨己の本を取り出された。そこには多数の付箋とびっしりと小さな字でメモが記されていた。「堀口先生の本は辞書のように使っているんだ」と。私は大きな刺激を受けた。
本年3月に出版された『茶室露地大事典』は先生の遺作となりました。そしてその編集に加わらせていただいたことは、私の研究に大きな刺激になりました。
ご冥福をお祈りします。
k-soho.hatenablog.com

重要文化財・松殿山荘 近代建築としての和風空間―松殿山荘の見方

本日、松殿山荘で京都建築専門学校主催の講演会と見学会「重要文化財・松殿山荘 近代建築としての和風空間―松殿山荘の見方」が行われ、松殿山荘の見方について、新しい知見も加えお話しして参りました。
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kyotokenchiku.ac.jp

伝統建築講演会@徳島

とくしま文化財マイスター連絡協議会主催の講演会で
「伝統建築から学ぶ「茶の湯空間を歴史から読み解く」」と題してお話しいたします。
9月24日(月・祝)14:00 ~ 16:00
木材利用創造センター( 旧徳島県林業総合技術センター敷地内)林業人材育成棟大講義室
徳島市南庄町5 丁目1-9)
詳細はとくしま文化財マイスター連絡協議会のwebページまたは下記フラーヤーをご覧下さい。
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建築写真は、拙著『茶の湯空間の近代』(思文閣出版、2018.1)の表紙より
松殿山荘玄関

重要文化財指定記念公開講座

昨日、松殿山荘にて重要文化財指定記念公開講座が行われました。
野村美術館館長・谷晃先生の「高谷宗範と野村得庵」と題するご講演と小生の「ジェントルマンアーキテクト高谷宗範」、
そして見学会でした。
shoudensansou.wixsite.com
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近代数寄者と銘木文化

拙稿「近代数寄者と銘木文化」が淡交社の雑誌『なごみ』6月号に掲載されました。
当号は「茶室に生きる銘木」特集号で、中村義明氏による実例紹介などが掲載されています。
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小稿では京都の伊集院兼常の廣誠院、岡部正太郎が手を加えた弘道館、そして石川県の新家正次の無限庵を紹介いたしました。

鴨東通信no.106

思文閣出版の『鴨東通信』no.106にエッセイ「茶の湯空間からの近代」が掲載されました。

内容は、先般の学術書茶の湯空間の近代』に関連したものですが、「茶の湯空間「の」」を「茶の湯空間「から」」としています。近代建築と茶の湯あるいは数寄空間とは密接な繋がりがあります。そのことについてエッセイとして書いたものです。機会があればご覧下さい。
なお、同誌には「近代数寄空間を煎茶文化でよみとけば」と題しての鼎談(尼崎氏、麓氏、矢ヶ崎氏)も掲載されており、茶の湯文化、数寄空間への注目度が高まることが期待されます。

思文閣文化サロン

朝日カルチャーセンター京都教室、思文閣文化サロンで、「『茶の湯空間の近代 世界を見据えた和風建築』 数寄屋建築から見えてくる近代」と題してお話しして参りました。
この度は、2月に思文閣出版から上梓した『茶の湯空間の近代 世界を見据えた和風建築』に因んでの講演となりました。
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場所は松殿山荘です。
講座内容:(朝日カルチャーセンターwebページより)

近代の茶の湯空間、それはもちろん日本の伝統なのですが、また一 方、世界的な視野からも位置付けられるものです。西洋建築が近代化するとき、大きく着目されたものの一つが日本建築でした。とりわけ茶室や茶の湯の影響を受けた数寄屋建築は、その簡素な意匠を元にした建築に、豊かな空間が構成され、西洋や日本の近代の建築家たちを魅了しました。一方で明治維新を迎えた日本においては、人びとの視点は西洋に向き、伝統文化は大きな打撃を受けたのです。この激動の近代における茶の湯空間について、さまざまな側面を考察します。

茶室の本質

淡交4月号特集「茶の湯における茶室」で「茶室の本質」と題して小稿を記しています。
茶室の本質として、自然との関わりについて焦点を当てたものです。
茶室とは壁で囲われた閉鎖的なもの、という反論が聞こえてきそうですが、しかし自然との結びつきの強い建築なのです。
なぜ?どこが?と思われるかも知れません。内容は、本書をお読み下さい。
また機会があれば概要を記していきたいと思います。
https://www.tankosha.co.jp/ec/sysimg/image/img/03201310_5ab089aa4b80e.jpg

淡交平成30年4月号

七事式●貴人清次花月之式・炉(三) 点前●紹鷗棚 薄茶点前(一)

裏千家茶道の機関誌、また茶の湯を中心とする日本文化を総合的に紹介する月刊茶道誌。宗家の最新情報や全国の淡交会会員の活躍を豊富な写真とともに紹介、さらにオールカラーの点前のページや連載読物、毎号テーマを変えての《特集》など、多彩な情報を満載してお届けします。

今月の扉 四季の金団 めぐる、春(髙家 啓太)

◎巻頭言
花鳥風月を見つめる(千 宗室)

◎点前のページ
七事式の解説 貴人清次花月之式・炉(三)(千 宗室/監修)
点前の解説 紹鷗棚 薄茶点前(一)

◎特集
茶の湯における茶室
茶室の本質(桐浴 邦夫)
茶室のイロハ(田野倉 徹也×はな)

◎好評連載
わたしの「名物」―私的名物記 文豪の「秘色」(三笠 景子)
ロバート キャンベルの名品に会いに行く 古伊賀水指 銘破袋(ロバート キャンベル)
日本のうるし 甲州印伝
茶人の嗜み 能を学ぶ 桜川(金剛 龍謹)
皇室と茶の湯 慈胤法親王後西天皇(依田 徹)
触れることば~心に触れることばの秘密 おぼろ月夜(黒川 伊保子)
茶道心講 後見の美術商(岡本 浩一)
淡交歌壇(佐佐木 朋子・選)
淡交俳壇(橋本 榮治・選)
インタビュー 我が師を語る(神谷 宗雅)
今月の表紙より(鈴木 宗博)
組織における茶道の広がり 松江市役所

行事報告
九州裏千家生茶道研究会25周年記念大会

東西南北
[京都青年会議所初釜式・国際ソロプチミスト初茶会/大和学園「誠心軒」茶室披き/第31期L・T出向員研修開講式]

総本部だより
月釜ご案内
淡交通信(ホッとお便り/情報アラカルト)
クロスワードパズル
美術館案内
いちょうプラザ(青年部)
裏千家学園 お茶づけの日々

茶会記(淡交会記/一般会記)