建築 と 茶の湯 の間

桐浴邦夫(KIRISAKO Kunio)の備忘録 茶室・数寄屋・茶の湯・ヘリテージマネージャーのことなど

リーガロイヤルホテル

『建築と社会』10月号に拙稿「大阪ロイヤルホテル」が掲載されています。f:id:kirisakokunio:20130823112906j:plain
設計者の吉田五十八は御存知のように近代数寄屋の中心にいた一人です。このホテルの設立に尽力した山本為三郎に請われて、設計を行いました。実業家の山本は民芸のコレクターとして有名で、そのコレクションは現在大山崎山荘美術館に収められています。山本の求めに応じ、民芸を含む伝統意匠をちりばめたのがこのホテルです。吉田の得意とする寝殿造をアレンジした意匠が随所に見られます。また民芸デザインはリーチバーに見ることができます。英国田舎風の意匠です。吉田はいわゆる数寄屋風書院造のみを数寄屋ととらえず、幅広く伝統意匠をアレンジしたものも数寄屋と考えていました。まさにその考えが活かされた建築がこの大阪ロイヤルホテル(リーガロイヤルホテル)なのです。

弘道館茶の湯文化講座「近代茶室と数寄屋」

本日13:00~14:30、弘道館にて講義を行って参りました。
西洋建築が近代建築へとその姿を変えるとき、少なからぬ日本建築の影響がありました。厚い壁、小さな窓、自然と相対する建物は、薄い壁、大きな開口部、自然とかかわりの深い建物へと変貌を遂げました。そこで参照されたものの一つは、日本建築でした。
一方で日本の伝統的な建物も西洋の近代化の影響を受けました。
・・・・
f:id:kirisakokunio:20130725163501j:plain
宇治にある松殿山荘はまさにその両面を持った建築で、大正末から昭和初期にかけて建築されました。・・・・
f:id:kirisakokunio:20061125134724j:plain

古典の日「街かど古典カフェ」特別講座Ⅱ

古典の日「街かど古典カフェ」特別講座Ⅱにて、松殿山荘の解説をして参りました。
http://f.hatena.ne.jp/kirisakokunio/20130712201035
(リンクが切れていたようでしたので改めました)
f:id:kirisakokunio:20130712201035j:plain
と、いってもわずか10分です。
この短時間に松殿山荘の建築史的意義をわかりやすく?お話ししましたが、ご理解いただけたでしょうか。
f:id:kirisakokunio:20130712200155j:plain
西洋建築の近代化、そして数寄屋建築の近代化、その狭間に位置する松殿山荘、という構図です。

お手伝いいただいた皆様には感謝申し上げます。

甲子園ホテル

『建築と社会』2013年2月号に「再読 関西近代建築」シリーズとして、拙稿「甲子園ホテル」が掲載されました。
f:id:kirisakokunio:20130212105916j:plain
現在、武庫川女子大のキャンパスとして使用されている元甲子園ホテルについて、その建築概要や、設計者遠藤新についての概要、そして日本の伝統が引用されているという側面を紹介しました。

遠藤が師事したフランク・ロイド・ライトは、浮世絵コレクターとして有名で、また経営者林愛作は日本美術を扱う山中商会のニューヨーク支店長を務めた人物であった。彼らに大きく影響を受けた遠藤は、甲子園ホテルの設計に日本の伝統をメタファーとして織り込んでいたのである・・・

茶室の計画2

建築士会の勉強会で、前回に続いて、「茶室の計画」の第二回目をお話ししてきました。
象徴としての茶室の各部、床の間や天井あるいは点前座を中心とした空間の上下、そして光と影についての講義です。
f:id:kirisakokunio:20120227151910j:plain
皆如庵。この円窓の光の奥に見えるものは・・・
淡交別冊『利休と七哲』をお読み下さい。
また次回は松花堂の見学会となるので、その予習も行いました。
最後にそれに関連して、武田五一の設計で現在明治村にある芝川邸の邸内にあった松花堂の写し(これは武田の設計ではありません)について、簡単に説明しました。

佳水園

京都市文化観光資源保護財団の見学会、都ホテル佳水園の講師を務めました。
はじめに都ホテルの葵殿にて講義を行い、それから庭園と佳水園の見学を行いました。
数寄屋は自然との関わりの深い建築ですが、近代になって西洋の建築家たちが注目するようになりました。一般に西洋では石造建築の歴史が長く、基本的には厚い壁に小さな窓の構成で、外部空間と内部空間が明確に区切られて参りました。しかし近代に入り、薄い壁に窓を広くとった建築が多くなりました。そこで注目されたものの一つが日本の数寄屋建築です。そしてさらに面白いのは、日本人の建築家たちが、それを察し、数寄屋に対する注目をさらに深めたことです。村野藤吾もその一人でした。
佳水園の興味深い点は、日本の伝統がモダンな要素として組み立てられているところが挙げられます。
f:id:kirisakokunio:20080130104119j:plain
薬医門の変形ともいえる門構え。控柱が表に立ちます。
f:id:kirisakokunio:20080130111307j:plain
佳水園玄関、障子がロシア構成主義的にまとめられています。
撮影はいずれも2008年

四君子苑と東華菜館の見学会

CLUBTAPの主宰する見学会の講師を務めました。行き先は四君子苑と東華菜館。
まずは京都府立文化芸術会館において、吉田五十八四君子苑についての簡単な講義を行ってから、四君子苑に参りました。今年だけで二度目の見学となりますが、今回も整備の行き届いた美しい建物と庭を拝見することができました。
私が訪れたのは午前中でしたが、午後から竹中大工道具館主催の見学会があるとのことで、担当者やその講師の今里隆さん(杉山隆建築設計事務所所長、吉田五十八の元で四君子苑を担当された)にもお目にかかることができました。今里さんからは短時間ではありましたがお話をうかがうことができました。
午後からは、昼食を兼ねて東華菜館の見学をしました。ヴォーリズ設計のこの建物は、これまでに何度か訪れたことがありますが、見れば見るほどさまざまな要素(様式)が混ざり合って、様式建築の勉強にはもってこいの建物だと感じました。
f:id:kirisakokunio:20030731164259j:plain
正面の装飾はスパニッシュバロック
写真は2003年に撮影したもの

弘道館での講座

弘道館(京都市上京区)の講座で、茶室の見方についての講座を行いました。裏千家住宅を事例に引いて、空間の上下とそれをまぎらかす手法などについて、お話しして参りました。
茶の湯空間のおもしろさの一つは、空間の上下をいかに利用して平等ということを表現するか、あるいはもてなしを表現するか、ということです。これはたとえていうならば柔道のようなものです。つまり空間にはおのずと上下があるわけで、その「力」を利用して平等を表現するのです。おわかりでしょうか?

茶室の計画

京都府建築士会の伝統建築研究会の主催する茶室勉強会の講師を務めました。
タイトルは「茶室の計画」。
茶室は「美」の観点から語られることが多い建築ですが、一方で「用」すなわち計画的にも興味深い側面を持っている建築です。
茶事のことや八炉、床の間の位置など、茶室の計画的側面の基本をお話しして参りました。