建築 と 茶の湯 の間

桐浴邦夫(KIRISAKO Kunio)の備忘録 茶室・数寄屋・茶の湯・ヘリテージマネージャーのことなど

全国ヘリテージマネージャー大会

昨日に引き続き、全国ヘリテージマネージャー大会が行われ、「KOMOの多様な人材による活動について」と題して、事例報告を行いました。
http://www.kenchikushikai.or.jp/data/zenkokutaikai/60th_kyoto/07.session%EF%BC%88joho_heritage%EF%BC%89.pdf

茶室露地大事典

淡交社から、「茶室露地大事典」が刊行されます。
監修:中村昌生
編集:池田俊彦、桐浴邦夫、倉澤行洋、仲隆裕、中村利則、西和夫、日向進
執筆者:50名以上
項目数:4,900
2018年3月刊行予定
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tairyudo.com

茶会記にみる押入をめぐって

建築学会大会で、「茶会記にみる押入をめぐって」と題して発表いたしました。
内容を要約すると以下の通りです。

茶会記には「押入」「押入床」という言葉がときどきでてきますが、これは何を示すのでしょうか。これまでは、押入状の床の間、現在の床の間に似たもの、などと解釈されていました。でも押入状の床の間、とはどういうものでしょうか?また現在の床の間に「似た」ものとはどういうものでしょうか?
押入状の床の間とは一説によると、松花堂の床脇の戸棚のようなものともいわれてきました。しかしそれでは説明のつかないものも多々みられます。
それで16世紀の茶会記を検討いたしました。
もちろん現在の床の間と同様の意味として使用されているケースがあります。つまり床の間と解釈することは問題ないでしょう。
しかしそれ以外のものについて、押入状の床の間と理解するには少々無理があるものもみられます。
そこで、当時の様子を理解する手がかりとして日葡辞書をみてみました。
そこには「ヲシイレ」が「家の外側へ突き出たところの内側にある空所」とでていました。茶室において「家の外側へ突き出たところの内側にある空所」とはどういう部分でしょうか?
一つは床の間です。
そしてもう一つ考えられる部分は、台目構えの(大目構え)の点前座です。
茶会記に記されている「押入」の一部に台目構えの点前座と考えると、すんなりと理解できるものがみられます。
ということで、「押入」の意味としては、「床の間」と「点前座」を示していたものと考えられるのではないか、という説を発表しました。

上記について、ご批判があれば頂戴したいと存じます。
以下、補足です。

この時代、茶室の形態として現在のものの原型が生まれた時期です。
そのひとつに台目構えもあります。
また、床の間そのものも、現代のように形づくられたと考えられる時期です。床の間は上段と押板が凝縮された形式だとの説があります。
そのようなことから、言葉に混乱があったものとみられます。

花街の建築

有斐斎弘道館の講座「茶の湯の文化を識る」において、「花街の建築」と題してお話しして参りました。
kodo-kan.com

内容は、以下の通りです。
■ 花街と都市
■ 島原 角屋の建築について
□ 吉野太夫の茶室をめぐって(番外)
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写真は、花街のものではありませんが、番外としてお話しした、吉野大夫遺芳庵。
ちなみに二代目吉野太夫は、江戸初期、六条三筋町の太夫でした。
建築をはじめ文化の発展には聖俗両面、幅の広さが重要です。数寄屋についても同様で、花街建築が数寄屋建築の一面を担っていてことは、事実です。また都市の発展とは不可分の関係にありました。今日はそのような側面からお話ししました。

『モダンエイジの建築』

日本建築協会100周年を記念した図書『モダンエイジの建築』届きました。滋賀県庁舎、関電京都ビル、京都市美術館、甲子園ホテル、橿原神宮駅、大阪ロイヤルホテル、そして1935年の「茶室建築特集号」を担当いたしました。
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茶室特集号では、当時の建築家たちの認識として、茶室が過去の建築ではなく、まさにその時代を生きているものとしての認識であったことが、良くわかる内容となっていました。数寄屋建築家の木津宗詮や、当時の新進の建築家、吉田五十八の論考などが掲載されていました。また興味深いのが、当時の写真の撮り方です。現在とは違って、あえて戸を開けて撮った写真が多いのです。おそらく茶室の立体的な構成を見せたかったのだと思われます。

日本建築協会100周年

日本建築協会が100周年を迎え、記念行事が行われました。
www.aaj.or.jp
その一環として100周年記念誌が出版され、これまで『建築と社会』誌で連載されてきた「モダンエイジの建築 -「建築と社会」を再読する-」が掲載されました。
小著も数本掲載されています。
またあらためて、詳細は記したいと思います。

平成のちゃかぽん 有斐斎弘道館 茶の湯歳時記

淡交社から『平成のちゃかぽん 有斐斎弘道館 茶の湯歳時記』が、出版されました。
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伝統的な日本文化を現代に生かす活動を行っている「有斐斎弘道館」の茶会についての図書です。
弘道館の茶室と庭園の解説を担当いたしました。
弘道館の建築は一見さり気ないものですが、細部に着目すると、その材料や意匠にじつに興味深い工夫がなされています。時代背景や空間構成の変化なども興味深い点です。
数寄屋とはこういうもの、というお手本のような要素が内包されています。
本書を読まれ、あるいはじっさいに見学(要予約)されることをお薦めします。