建築 と 茶の湯 の間

桐浴邦夫(KIRISAKO Kunio)の備忘録 茶室・数寄屋・茶の湯・ヘリテージマネージャーのことなど

『茶の湯空間の近代』刊行されました

拙著『茶の湯空間の近代』が、平成29年度科学研究費助成事業「学術図書」の交付を受け、思文閣出版より刊行されました。

内容は、これまでの論考のうち近代にかかわる部分をまとめ、一部関連の考察を加えたものです。

修士課程を出てからしばらくブランクがありましたが、10年程のち、偶然ですが一つの論文をまとめることになり、その後いくつかの論文を書くことができました。
そのうちの一つは、修士論文で扱った武田五一の茶室研究についてのことです。じつは修士公聴会ではボロボロだったのですが、基本内容は間違っていないと確信し、その十数年のちに少しだけ手を加え、黄表紙(日本建築学会論文集)に投稿し、採用されました。
今回はそれも含め、近代茶の湯空間のいくつかの側面について考察したものです。
今回は単著でありますが、もちろんさまざまな皆さまにご指導、ご協力賜りました。
中村昌生先生には、さほど出来が良かったわけでもない私を長く見守っていただき、折々にアドバイスを頂きました。特に「行間を読め」という言葉は、ずいぶん役に立ったように思います。論文は理詰めで記していくものであることは言を俟たないわけで、私自身もそのように努めています。しかし人の書くものであるかぎりは、いわゆる「行間」があります。他人のエッセイのみならず論文を読んだとき、その「行間」が見えてきたとき、「しめた」と思います。文字で記されていないそこからの拡がりを受け取ることができるからです。(このあたりのことも、「行間」に封じておいた方が良いのかも知れませんが)
そして鈴木博之先生には博士論文で大変お世話になりました。提出前に何度か研究室におじゃまし、さまざまなお話しをお伺いすることができたのは、論文を審査していただいたのと同様に(以上に?)私にとって大きな収穫でした。ジェントルマン・アーキテクトのこと、松殿山荘のことなどは今回の著作に生かすことができました。もっといろいろなことをお聞きしたいと思っていたのですが、短い間の師事となり残念です。
松殿山荘茶道会や千島土地株式会社、博物館明治村、その他多くの団体や機関に、調査に協力いただきました。感謝申し上げます。

なお、今後、もう少し近代のことをすすめることと、以前から扱ってきた近世(桃山・江戸)のことについて、これも後もう少し付け加え、まとめていきたいと思っています。
皆さまには、今後ともご指導ご鞭撻いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

『茶の湯空間の近代』第3報
『茶の湯空間の近代』第2報
『茶の湯空間の近代』第1報

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