建築 と 茶の湯 の間

桐浴邦夫(KIRISAKO Kunio)の備忘録 茶室・数寄屋・茶の湯・ヘリテージマネージャーのことなど

寺田家旧蔵数寄屋関係史料調査報告書

ひとつき以上前のことですが、竹中大工道具館より『寺田家旧蔵数寄屋関係史料調査報告書』が発行されました。
私も、いくつかの図面の解題を記しています。
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(申し訳ありませんが、写真は拡大しても詳細がわからないようにしています)

・・・本報告書の刊行によって、さらに「数寄屋史料」の研究が深められ、数寄屋建築、茶道史をはじめ関連諸分野の研究の進展に寄与することになれば幸いです。・・・
公益財団法人竹中大工道具館「序」より

これらの史料から、江戸期の茶室について見えてきたこともあります。吟味しながら何等かの形で発表できればと思っています。

「数寄者高谷宗範の建築意匠について」

京都精華大学で行われた第58回意匠学会大会で「数寄者高谷宗範の建築意匠について」と題して発表して参りました。
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高谷宗範の代表作松殿山荘、芝川邸の茶室などについて述べ、武田五一の芝川邸洋館(現明治村)の床の間の幅や床柱の変更に宗範が関与している可能性に言及しました。そしてその著作からジェントルマンアーキテクトである宗範の建築に対する考え方を読み解き、松殿山荘が近代における和風建築の新たな展開を模索するものとして、藤井厚二が大山崎に実験住宅を建てたことに準え、壮大な(様式の)実験建築として建てたもの、との結論を呈示しました。
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日本建築学会 日本建築和室の世界遺産的価値特別調査委員会

日本建築学会の日本建築和室の世界遺産的価値特別調査委員会の委員に任命されました。
6月28日に第一回の委員会が行われ、出席して参りました。
www.aij.or.jp
委員会の設置目的は「・・・和室が国際的にも尊重すべき文化財として認知される状況を創出することを目的とする。」とあります。
和室は、世界的視点からみても非常に特異な形態です。一方で、近代建築、いわゆるモダニズムへの影響、あるいはモダニズムからの影響なども見られ、近代建築として、大きな役割を演じていたものでもあります。
もっとも、和室といっても、さまざまな側面があります。どのようにして「国際的にも尊重すべき文化財として認知される状況を創出する」かは、なかなか困難なことだろうと思われます。微力ながら尽力して参りたいと存じます。

日式茶室設計

小著『世界で一番やさしい茶室設計』 が台湾で出版されました。
www.books.com.tw
林書嫻という方が訳されました。
博客来(台湾のamazonのようなもの)には、私の紹介が以下のように出ていました。
少し面白い?のでpasteしておきます。
内容の紹介や「名人推薦」は何が書かれているかわかりませんが???、これだとおよそ読めました。

作者介紹
作者簡介
桐浴邦夫
  1960年生於日本和歌山縣。就讀京都工藝纖維大學研究所碩士班時由中村昌生老師指導。東京大學工學博士。現職為京都建築專門學校第二部及傳統建築研究科教師及大學兼任講師。一級建築士、茶名宗邦。著書有《近代的茶室與數寄屋》(淡交社)、《近代京都研究》(合著,思文閣)、《民俗建築大事典》(合著,柏書院)、《茶之湯的銘大百科》(合著,淡文社)、《圖解木造建築事典》(合著,學藝出版社)等。論文有〈大正期的雜誌內刊載之茶室論點的走向——邁向現代主義的茶室論點研究〉、〈關於紅葉館與星岡——1880年代的數寄屋〉等。

The 3rd Ocha Zanmai International Conference

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 photo by Dr. Mohammad Salama, San Francisco State University
米国での国際会議で講演を行いました。
かねてよりお知らせしていましたように、5月1日、サンフランシスコ州立大学にて行われた茶の湯の国際会議「3rd Ocha Zanmai International Conference」にて、「山上宗二記と桃山の茶室」と題して特別講演を行いました。
会場には在サンフランシスコ総領事をはじめ、日本文化や茶の湯に関心のある学者の方々、当地での茶の湯の実践者など、多数の皆様のご来場がありました。
内容は、西洋近代と日本文化との関わりをプロローグとしてお話をし、その大きな源となった桃山時代の茶室について、千利休を中心に山上宗二記記載の茶室図面、洛中洛外図を参考に、スピーチいたしました。
レジュメを御覧になりたい方は、こちらから
参考ページ:k-soho.hatenablog.com

建築学会近畿支部建築論部会コメンテーター

日本建築学会近畿支部建築論部会において開催された講演会、近藤康子氏「近代建築家の茶室論にみる茶の湯の生活空間に関する研究」のコメンテーターを務めました。
近年の建築学会においては、茶室に関しての研究発表は必ずしも多くない状況でした。じつは昭和時代、多くの建築家や建築研究者が茶室に興味を持ち、さまざまな角度から研究が行われていました。溯ると明治期の武田五一の茶室研究に行き当たるのですが、明治においてはまだまだ盛んではありませんでした。大正期に徐々に拡がりをみせますが、大きな展開は昭和になってからです。昭和における活発な研究の端緒を開いた人物が堀口捨己。近藤氏の論文は、その堀口に建築論の立場でスポットを当てた研究です。建築研究史的な視点においても将来大きな意義を持つものと思われます。今回の講演会では多くの研究者の方々が聴講され、とりわけ若い方々も多くいたように思います。再びこの分野の研究が活発になることが予兆された講演会であったと思います。

再読関西近代建築「茶室建築特集号」

拙稿が『建築と社会』2016.03に掲載されました。
『建築と社会』誌、昭和10年10月号は茶室建築特集号で、これについて解説したものです。

http://www.aaj.or.jp/wp/wp-content/uploads/201603con.pdf
昭和初期において茶室への注目度は非常に高いものでした。各建築の雑誌においてこの時期、茶室や数寄屋の特集が組まれました。本稿は『建築と社会』誌における茶室特集がどのようなものであったのか、その重要な視点は何か、ということについて考察したものです。

弘道館での講座 茶の湯の文化を識る

本日は有斐斎弘道館にて、「近代数寄屋の一側面「あさが来た」「マッサン」そして「ごちそうさん」を繋ぐもの」と題するお話をして参りました。
松殿山荘とそれをつくったジェントルマンアーキテクト高谷宗範について、その特殊な数寄屋建築が生まれる背景を、NHKの朝の番組を通して説明しました。
よけいに複雑になってしまったかもしれませんが、親しみも持っていただけたかなと思います。
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「あさが来た」の主人公の姉はつの嫁ぎ先山王寺屋、史実としては天王寺屋(大阪今橋)の屋敷の一部が松殿山荘に移築されています。

講演会 高谷宗範 「茶室と庭園」 をめぐって 11/23

11/23、松殿山荘にて「高谷宗範『茶室と庭園』をめぐって」と題して、講演いたしました。
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先般の建築学会での発表を、一般向けにした内容を中心に、今話題の大阪今橋の天王寺屋(朝ドラ「あさが来た」の山王寺屋)から移築した座敷についてもお話ししました。これは昨年から京都府建築士会の皆さまに協力いただいて行っている調査によって、少しわかってきた内容も含まれています。
ちなみに昨年の朝ドラ「マッサン」でニッカウヰスキーに出資した芝川又四郎(ドラマでは野々村さん)の甲東園の屋敷、和館の一部を高谷宗範が設計しています。そして洋館(現明治村に移築)は武田五一(一昨年の朝ドラ「ごちそうさん」の竹元教授)の設計です。またこの松殿山荘と芝川邸にはいろいろ共通点があります。そんなお話をして参りました。shoudensansou.wix.com